5Gが進化する中、6GはIoE(Internet of Everything)に狙いを定める

私たちは、1980年代に始まり10年ごとに新規格が導入されてきた進化プロセスの最新段階である第5世代のモバイル通信技術の渦中にあります。
5Gは、はるかに高速のデータ転送速度、はるかに低い遅延、そして単位面積あたり過去にない多くの端末のサポートを実現する可能性を秘めています。現在、この規格は、世界中の通信事業者により導入が進められています。しかし、多くの顧客にとって、5Gは必要不可欠というわけではなく「あるに越したことはない」というレベルに留まっています。
3Gと4Gの普及においてSMSとソーシャルメディアがそれぞれ重要な役割を果たしたように、5Gの普及を促すキラーアプリケーションを見極める競争が起きています。
5Gの進化
現在、規格開発プロセスが進んでいます。電気通信規格の開発の統括組織である第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)は、5G仕様のリリース15および16を既に凍結しました。リリース15は、5Gサービスの配信に使用される基礎ベースバンド、モバイルブロードバンド、およびミリ波接続技術を定めています。リリース16では、中核のモバイルブロードバンド機能の一部改善、優れたMIMOモビリティ、およびミリ波接続を実現します。また、リリース16では、産業用アプリケーションにおけるTSN(Time-Sensitive Networking)のニーズに対応し、5Gを使用して車とモノの接続(いわゆるV2X通信)を実現する際の課題を解決する技術も追加しています。
リリース17は、この取り組みを続け、衛星接続を規格へ組み込むオプションを導入します。また、統合アクセスやバックホールなどの技術の導入も視野に入っています。基地局は、この機能を通してデイジーチェーン接続できます。この「サイドリンク」機能を使用することにより、適切な装備を備えたモバイル端末は、中核ネットワークへアクセスすることなく直接対話できます。

5G規格の新規リリースの開発スケジュール(出典: 3GPP)
この3つのリリースは、当初の可能性を完全に実現するために5G規格を具体化します。開発の第2段階は、リリース18~20に定められており、5G-Advancedと呼ばれる5Gの大規模な進化形を実現します。これは、今後10年間の後半に実現する可能性が大きく、全二重通信などの機能、および通信エリア、遅延、信頼性を向上させるための信号のさまざまな送受信方法が含まれる可能性があります。
AIとMLの役割
また、この分野では、人工知能(AI)と機械学習(ML)が2つの意味でモバイルネットワークにおいて大きな重要性を持ち始める可能性があります。1つは明らかです。 5Gは、特にIoT(モノのインターネット)のエコシステムの推進に使用される場合、分析可能な大量のデータをサポートします。たとえば、MLは、おそらく移動中の車に対するセルの切り替えを管理するために使用できるでしょう。MLアルゴリズムは、予測されるトラフィックパターンおよび現在のセル利用率に関する十分なデータを利用することにより、近隣の全ユーザーが最高のサービスを確保できるように切り替えを前倒しまたは後送りできます。
もう1つのMLのアプリケーションは、ネットワーク自体の複雑さへの対応です。たとえば、5Gは、ミリ波信号対応の端末が信号を最大限受信できるようにビームフォーミング・テクニックの使用を指定しています。これは、1つのサイトで複数のアンテナを使用したり、分散型アンテナを共調使用したりすることにより実現できます。しかし、受信機で最大限の効果を得るためには、各アンテナから送信される信号を最適化するMLテクニックが必要です。 モバイルネットワークのディスアグリゲーションと仮想化が進み、その中で計算がより広範囲に広がるにつれ、同様の協調最適化の課題が数多く起きるでしょう。
すべてのモノを相互接続する通信の実現
5G-Advancedは、2030年まで続くと見込まれます。 これまで同様、6Gへの取り組みは、規格の内容と実現方法を定めるために既に進行中です。 ある意味で5Gの役割がIoTの実現にあるとすれば、6Gの役割はIoE(Internet of Everything)の実現にあり、その中には皆さんも含まれます。
この段階でありがちですが、6Gの導入技術、目的、および有用性は、最も広い意味で検討されています。 欧州連合の研究開発プログラム「Hexa-X」プロジェクトは、私たちの物理的環境と生物学的存在から成る「デジタルツイン」(つまり、非常に高度なシミュレーション)をデジタル環境で実行できるように、デジタル世界と生物学的人間世界との濃厚な接続を実現する6Gアプリケーションを定義することを提案しています。その主旨は、実世界に大量のセンサーを導入し、そこで生み出されたデータにAIとMLのテクニックを応用することにより、私たちは、自らのニーズをより良く予測し、実世界での関わり合いを自動化し、素晴らしい結果をもたらすということです。
これは非常に野心的ですが、Hexa-Xは、その実現を既に探求しています。このプロジェクトには、主に下記の6つの目標があります。
- デジタルと実世界の相互接続の探求
- ボディエリアネットワークを含む膨大なネットワークのネットワークの実現
- 省エネによる持続可能性の実現
- 誰でもアクセス可能
- 優れた接続および経験
- 高度な信頼性およびセキュリティ
これら目標を念頭に、Hexa-Xチームは、相互通信およびデジタルツインと通信するインテリジェントマシン、物理的な世界にデジタル参加した没入型の体験を可能にする膨大なセンサーネットワーク、高度なテレプレゼンスシステム、複合現実(MR)によるゲームおよび職場などのアプリケーションの実現に6Gが使用されると考えています。私たちの体のデジタルツインは、精密医療の実現へ向けた新たな方法も切り開くでしょう。
このようなビジョンを実現するネットワークの構築には何が必要でしょうか?主な特徴は、あらゆる状況における無限に近い接続、セキュリティと信頼性を確保するためのはるかに強固な施設、柔軟性確保のために複雑さの管理方法を学習できる完全認識ネットワーク、およびネットワーク・コンピューティング・ファブリックを介して幅広く分散された大きなコンピューティング能力と思われます。
皆さんがモバイル技術の遍在を日々体験しているにしても、この6Gのビジョンは、私たちがまだ何も見ていないことを示唆します。

