ウェアラブルヘルスケア製品における主なアナログデザイン間の接続性の考察

超低電力アナログ生体センサー、デジタルマイクロコントローラー、および革新的な電力・バッテリー管理の開発は、ウェアラブルヘルスケア製品の成長を推進しています。適用範囲は、活動の追跡から血中酸素レベル、血中ブドウ糖レベル、体温などまで拡大しています。従来は病院などの診断施設で測定されていた生体信号のほとんどが今では従来レベルに近い精度と大幅に低い価格で収集できます。
それは当然のことです。なぜなら、市場調査会社IHSの予測によれば、世界におけるウェアラブル製品の出荷は2019年には2億件を超えると推測されており、過去6年間の量の実に2倍となります。
それでもなお、ウェアラブル製品がさらに多くの人々の日常生活に導入されるためには信頼性と精度に関する多くの課題に取り組まなければなりません。これらのデバイスは、測定値がライフスタイルの調整あるいは病気の早期発見のためのサインとして使われることがあるため、高い信頼性が要求されます。そのためには、厳しい環境、発汗、動作、および周辺光などの要素に起因するバイオセンサーの測定問題を克服するよう設計されなければなりません。
正しい接続性
すべてのウェアラブル製品にとって核となる課題は接続性です。今日のウェアラブル製品においては、シームレスなワイヤレス接続がほぼ当然のこととなっています。ワイヤレス伝送は、大型ディスプレイ画面あるいは遠隔地のデータ収集施設へのデータ送信を可能にします。低消費電力ブルートゥース(BLE)はこの目的のために新たに登場しました。さらに、近距離無線通信(NFC)は機器構成情報およびログデータの取得などの短いコンテンツの伝送に非常に適した範囲限定のワイヤレス接続を提供します。
例えば、新規のフィットネスバンドのような製品開発を行う際、エンジニアは伝送が必要なデータ量、頻度、および伝送範囲を考える必要があります。必要な伝送量がメガバイトに達する場合、設計者は従来のブルートゥースまたはWi-Fiの使用を考えるかもしれません。
伝送範囲は、もうひとつの決定要因です。BLEは通常LOS(無線通信可能な範囲)30メートル以上の通信が可能です。さらに、デバイスがスマートフォンに伝送しそこから分析のためにクラウドにデータを転送するような使用方法も決定要因になり得ます。
過酷な使用に耐える
多くのウェアラブルシステムはスポーツなどの過酷なアクティビティで装着するためにデザインされています。過酷というのは相対的です。救命用デバイスに対する要件と、サイクリング用モニターに対する要件は異なります。
現実世界の条件下での信頼性とは、通常であれば電子機器が使われないような環境に対応することを意味します。このような部品には、多重パラメーターモニター用の低電力、アナログフロントエンド(AFE)ソリューション、ならびに、オペアンプ、電流検出アンプ、フィルター、データコンバーターなどの組込み型アナログ部品があります。
特に、生体センサーからの電気出力はミリボルトやマイクロボルトレベルで極めて微小です。したがって、ウェアラブルヘルスケアアプリケーションとして実用的なセンサーの多くは、1つのチップまたはパッケージにアンプリファイアとコンバージョン回路を組み合わせ、これによって高レベルアナログ信号またはシリアライズされたデジタル信号を出力します。
例:フリッカー現象(ちらつき)への対応
光電式容積脈波記録法(PPG)は心拍数測定目的と脈拍酸素測定値(血液中の酸素レベルを測定するテスト)のためにしばしば使われる簡単で低価格な光学的測定法です。PPGは皮膚表面で光源と光検知器を使って血液循環の量的変動を測定する非侵襲性の技術です。
残念ながら、実際の使用において、光学センサーは周辺光を感知することがあります。室内照明には通常フリッカー現象(ちらつき)を発生し、これがPPG信号に干渉するのでこれは特に問題となります。国によって異なりますが、室内光は基本的に50Hzまたは60Hzの周波数でフリッカー現象が発生します。この率はPPG信号がサンプリングされる周波数に近似しています。これを修正しなければ、周辺光のフリッカー現象はサンプルごとに異なるバイアスオフセットを発生させます。


この効果に対抗するために、進歩をとげたPPGは今日、優れた信号経路を備えています。アルゴリズムもより精巧に発展を遂げています。その結果、今では設計者はPPGを小型イヤホン、指輪、ネックレス、ヘッドバンドやアームバンド、ブレスレット、腕時計、さらにスマートフォンなど様々な形態に組み込むことが可能になったのです。
どんな形態をとるにせよ、ウェアラブルセンサーは一般的なノイズとエラーの発生源から受ける影響を克服しつつ、高い信頼性を発揮できなければなりません。PPGセンサーに対する環境ノイズは通常光学的と生理学的の二つの主な種類に分類されます。
光学的ノイズとは観察する血液量が吸収する光に関連なくセンサーが感知する光学的経路の特性変化のことです。同様に、生理学的変化は血流と組織中の血液量を変化させ、これがPPG信号を変えることもあります。
50Hz/60Hzのフリッカー現象の影響を減らすために特別にデザインされた、高度な相関サンプリング法を特色とする、腕装着用Maximの MAX30112心拍率検知ソリューションは、フリッカー現象がPPG信号に与える悪影響を緩和することができます。これは1.8Vの主電源で稼働し、別個に3.1Vから5.25VのLEDドライバー電源を備えています。このデバイスは標準1I2Cの互換性インターフェース、ならびにスタンバイ電力がゼロに近いソフトウエアによるシャットダウンモードをサポートしており、パワーレールへの電力供給が常に維持されます。
時間節約ツール
ウェアラブルヘルケアデバイスは特定の生体医学機能を果たす、非侵襲的な自律システムです。このデバイスは心拍、体温、血中酸素、および心電図(ECG)信号を追跡します。センサーは通常、ある種の身体的な入力信号に反応し、電圧や電流という形で信号を発生し反応します。この信号は不純物の除去と円滑化をされて読み取りやすくされた後、妥当な率でサンプル化され、プロセッサーが読み取り可能な信号に変換されます。
これらすべての要件を満たす必要があるため、ウェアラブルヘルスケア製品の構築は容易ではなく時間もかかるのです。幸い、Maximのヘルスセンサープラットフォーム2.0は腕装着製品にECG、心拍数、および体温をモニターする能力を提供し、開発期間を数か月短縮しています。このようなツールを利用して、従来は診療環境でモニタリングされていた信号のほとんどが今ではウェアラブル製品で入手することができるようになります。
詳しい情報については下記をご覧ください http://bit.ly/Healthcare_Sensors_Maxim
