6つの他に類を見ないオペアンプ回路

電子回路は、ディスクリート回路から、きわめて高度なアナログ・デジタルシステムを可能にし、スペースとコストを節減した単一チップ上の高集積回路(IC)に進化しました。演算増幅器(オペアンプ)はアナログ設計で主役を担ってきた回路の一つです。今日の演算増幅器は単なるオペアンプではなく、アナログ設計を容易にする複数機能の統合となっています。しかしこれはすべての問題への解決にはなりません。オペアンプとディスクリート回路の両者ともそれぞれのメリットとデメリットがあります。
ディスクリート回路
増幅器は、すべての信号の電圧、パワーまたは電流を増大させるほとんどのアナログ回路の構成要素です。トランジスタはディスクリート回路に不可欠の部品です。複数のトランジスタの組合せは、抵抗やコンデンサのような受動・能動部品とともに、アナログ論理機能を作り上げます。 このようなアナログ論理機能は数学関数から成る希望のアウトプットを得るために利用されます。 これはオーディオ増幅器、論理回路、コンパレータ、演算増幅器、および入力からのスィッチのような設計アプリケーション用に派生されます。この回路はハイパワー入力を管理しハイパワー出力を提供し、回路パラメーターは部品とその数値を変えることにより達成されます。温度変動中の安定性も役に立ちます。
すべての個別ディスクリート部品を組み立て配線するにはより長時間かかり、より大きなスペースを必要とします。既存回路において、故障部品の交換が難しいこともあります。部品の接続にはんだ工程を使うため、ディスクリートレジスタには、信頼性の低さ、得られる精度の低下、同相除去(CMR)、オフセットドリフト、およびゲインドリフトなどの問題を抱えています。これらの要素以外に、抵抗においては高温度係数と精度の低さも妨げとなっています。これらすべてが、重大な回路のエラーにつながります。ディスクリート回路に関連するこの問題に対処するため、スペース、信頼性、および精度に関する問題への対策としてオペアンプが開発されました。
オペアンプ(演算増幅器)(集積回路)
オペアンプは電圧アンプとして機能する直接結合集積回路です。オペアンプの差動出力は2つの相対する極性入力と高ゲインの単一出力を提供します。複数のトランジスタと受動部品を利用して構成した典型的なアンプ機能が、今ではターミナル属性とわずかな外部接続部品によって特徴づけられる単一ICが取って代わられました。オペアンプは、個々のピンの接続によって、広範囲で利用されています。結果として得られる回路にはコンパレータ、差動アンプ、ピーク検出器、反転増幅器、非反転増幅器、およびアナログデジタル変換器などがあります。
集積回路オペアンプは小型サイズです。これは単一のチップ上に多数の複合回路を積載することによりデザインを簡略化することで可能となりました。パフォーマンスが格段に向上します。 接続が少ないため信頼性も向上します。ICの消費電力は微量で、静電容量効果がないため、稼働速度が上がります。
オペアンプはすべてのアプリケーションにおける問題への回答ではありません。熱放散とサイズの制約があるので、いずれのICオペアンプもAクラスのオーディオアンプに優れた品質のオーディオトランジスタを組み入れるのが不可能なのです。オペアンプに内蔵された部品が近くにあるため、EMI(電磁波妨害)ノイズに含まれる微量の信号がオーディオ信号を妨害します。もちろん、高級なオーディオアンプではスペースとコストの制約が少ないためリニア電源と特注トランスフォーマーを搭載したクラスA出力段は生き生きしたオーディオ性能を発揮します。
オペアンプの特性クラスを考慮した際、クラスD電力アンプがこの特定分野で優位に立っていることが分かりました。オーディオ品質に加えて、設計を検討するに際しては、電力効率、予算、さらにサイズも考慮されます。クラスDアンプは低消費電力の携帯用オーディオアプリケーション向けに製造されました。
オペアンプ回路のパフォーマンスを最大限に引き出す多様な役割を果たします。理想的なオペアンプが存在するとすれば、無限大のゲイン、ゼロ出力インピーダンス、および無限大の入力インピーダンスを有するもとなるはずです。それは無限の周波数応答を享受し、ノイズの混入がなく、ひずみも皆無でなければなりません。このような厳格な要件に対応できるオペアンプはありません。
様々なオペアンプが市場で入手可能です。より優れた性能を必要とするときは一般向け製品ではなく専用オペアンプが望まれます。アプリケーションの多様なニーズに対応するためには適正な製品を選ぶことが必須です。
以下のアプリケーション例は、正しく利用することによってICオペアンプがディスクリート回路の持つ無数のデメリットを克服する方法を示しています。
- アンプのDCエラー特性およびその高精度アプリケーションへの影響
入力バイアス電流と入力オフセット電流は、多くの高精度アンプのアプリケーションにおいて必須の特性です。両者は、容量フィードバックと抵抗フィードバック経由で出力に影響を与えます。いずれの典型的なオペアンプにおいても、同相除去比(CMRR)は、入力オフセット電圧が存在することにより精度が低下します。(信号がmV領域にあるような)微細な入力信号インスタンスの際、同相除去比は高くなければなりません。
電源電圧変動除去比(PSRR)は、電源電圧変動への反動としての追加入力オフセット電圧が発生する際、極めて重要な役割を果たします。オペアンプ入力インピーダンスは、ソースインピーダンスとゲインエラーの発生によって駆動されたアンプと共に真の分圧器を形成します。このような状況に対処するため、設計者は、同相除去比(CMRR)電源電圧変動除去比 (PSRR)が高く、比速度電力が低いオペアンプを選択する必要がるのです。その他の必要事項は、低入力バイアス電流と低入力オフセット電圧です。
オペアンプICのMAX 44260は、専用のESD構造を備えた高インピーダンスCMOS入力段を有し、低入力コモンモード電圧で低入力バイアス電流を可能にします。レールツーレール入力・出力およびデシベル領域のノイズ削減が不可欠である12-14ビットSAR ADCドライバーのような要求が厳しいアプリケーションには理想的です。さらなる電力節減は、高速起動シャットダウンモードにより達成できます。デバイスが非稼働中は停止電流をかなり減少させます。また、オペアンプMAX9620は、ゼロドリフトで低電力、低入力オフセット電圧です。このようなデバイスは最小のパワーで精密性を確保する新規のオートゼロ手法を使用しています。低ノイズのチャージポンプが、入力時にオペアンプのレールツーレールへパフォーマンス実現を補助します。
内部レールがオペアンプのレールからレールへの出力と入力を達成し、直線性を獲得し、卓越したCMRRとPSRRを提供します。さらに、オペアンプMAX4238は自動的相関ゼロイング手法を利用して精度と超低オフセット/ドリフトを生み出します。オペアンプのこのような低オフセット、1/fノイズキャンセリング、迅速 な セトリング時間により、この種のデバイスはADCバッファに最適となっています。
- 単電源オペアンプ付き全波整流器の実働
全波整流器は理想的には、2系統の電源を備えた2つのオペアンプを必要とします。2系統の電源が、入力信号の正常範囲に反応してプラスまたはマイナスになるバイポーラ出力電圧をスイングする必要があるためです。
オペアンプIC MAX44267は、単一電源レールで全波整流器を実働させるため、単一電源と真のゼロ出力を備えたデュアルオペアンプを有します。一方のアンプに内蔵されたIC付きデュアルオペアンプが、入力電圧の-0.5倍の負電圧を得ることができるようにするため、負電源が必要です。外部ダイオードとコンデンサはチャージポンプノイズと低リーク信号を減少させます。アンプは+4.5Vから+15Vの単一電源で稼働します。この構造は、いずれの負電源レールの要求事項を解消するので、システムの小型化とコスト節減を実現します。
- ホイートストンブリッジの線形化
低価格、抵抗可変、かつ正確なディスクリート部品は、設計における多くのフロントエンドタスクを実行します。高精密システムを対象として作業する設計者は、慣習に従いRTD(測温抵抗体)エレメントに固有の非線形性およびホィートストーンーブリッジを考慮します。マイクロコントローラー側面にあるフロントエンドを線状化するのと同時に、フロントエンドの校正が入念に行われる必要があります。 場合によっては、0.6%線形は許容されません。
オペアンプは、ブリッジ固有の非線形性を解析するだけではなく、温度センサーエレメント、RTDの非線形性、および線形化ブリッジ出力を生み出すデュアルオペアンプ回線の利用をモニタリングします。しかし、この回路はスイング範囲を倍増するため、アンプリに対し、正負電源を必要とします。 さらなるメリットは、同相除去で、これは第2のアンプが0V周辺で快適に動作することによります。

Fig 1: The internal structure of an IC MAX 44267
このシナリオは、MAX44267アンプが単一電源で作動するので、バイポーラ電圧を出力できることを想定して組立てられています。ヘッドルームが接地上になければいけない単電源アンプと異なり、このオペアンプは、真のゼロ出力を提供し、ブリッジセンサーに最適となっています。IC MAX44267オペアンプは、図1に示す通り、チャージポンプ回路、デュアルオペアンプおよびバイアス回路と一体化されています。さらなるメリットは、ボードレイアウトのスペースとコストの削減です。
- ベースステーションシステム向けの高電圧で精度の高い、電流検出アンプです。
これらのアンプは現在の技術に従って、最大50Vから60Vのバイアスがかけられていることがあります。このようなアプリケーションでは、デュアルオペアンプが電流検出に不可欠です。1つ目のオペアンプが電圧を下げ、2つ目のオペアンプがゲインを設定します。外部抵抗器により電流を得る場合に、ゲイン誤差を最小化するためには、高電圧PチャネルFET(電界効果トランジスタ)の利用が必要です。
デュアルチャネルハイサイド電流検出アンプと高電圧PチャネルFETを内蔵するMAX4428は、ゲイン誤差を最小化するという特徴を持ち、80kHzの小信号帯域で2.7Vから76Vの入力同相電圧範囲を有します。これはマルチチャネル多重データ収集システム用のSAR ADCへのインターフェースに最適です。ハイサイド電流のモニタリングは、測定される特定負荷のグラウンドパスに影響を与えないので、オペアンプが高電圧システムで幅広く利用できます。
- 過電圧からのADC入力の回路保護
作動中のアンプレールがADC最大入力範囲より著しく高い場合は、ADC入力に障害が発生します。もっとも一般的なのは、アンプ出力をクランプするためにショットキーダイオードを利用する方法です。このようなダイオードは蓄電容量があり、リーク電流がバンド帯域を制約し、歪みの原因となります。

Fig 2: The internal functional diagram of IC MAX 4428
蓄電容量と持続的なリーク電流を維持する効果的な方法は、保護ダイオード全体の電圧を0Vに維持することです。これは通常のアンプリファイア作動中に、保護ダイオードに0Vのバイアスをかけられるようにテストされた差動オペアンプドライバー保護技術を利用して行います。過電圧の場合は、ダイオードが故障電流をグラウンドに誘導します。しかしこのようなディスクリート保護技術は、より大きなスペース、リーク電流に対するモニタリングと対処を必要とします。またアンプには2系統の電源も必要です。
過電圧の問題はアンプ単一電源レールを使うことによって解決できます。 オペアンプ機能を持つ MAX4505信号ライン保護ICは、MOSFETスイッチと組合わせて、過電圧探知回路を提供します。IC オペアンプは、故障保護付きの入力とレールツーレール信号管理能力を備えた単一信号線プロテクターからなります。 故障の場合は、入力端末がオープン回路に変換し、ソースがナノアンペアの電流をリークします。オペアンプはユニポーラおよびバイポーラの両アナログ信号をシールドします。
- Aアナログ回路はヘルスモニタリングやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスに利用されています。
このようなユニークなデバイスの設計は、デバイスが手首に装着できるほど小さくなければならないが、効率的な充電レベル(SOC)モニタリング機能を有していなければならず、かつ、バッテリーの劣化状態がSOCに影響しないものであるべき、などの、様々な課題を呈示しています。低消費電力、大記憶容量、低電源ノイズであり、アナログ信号を持つ機器が求められています。
何らかの事象が発生したとき、これらの回路は、低電力回路がシステムに不可欠な機能を継続的にモニタリングするようマイクロコントローラーに警告します。出力電圧が必要レベル以下であることはバッテリーが低下し充電が必要であることを意味します。コンパレータオペアンプは、バッテリー電圧のモニタリングに利用することができます。
様々な充電式バッテリーがあり、化学組成もそれぞれ異なります。この差異がバッテリー電池の熱安定性、寿命、および特定のバッテリー電池電力を決定します。ソリューションは部品とICの小型化を要求しています。MAX6778は最小サイズとして利用可能です。これが、携帯装置の利用可能期間中の制度の高いバッテリーモニタリングをサポートします。 1% の精度が、バッテリーの劣化を通常より遅らせ、取替までの時間が長くなります。
ヒステリシスは、通常入力電圧ノイズの結果として、バッテリー電圧モニタリング時に起こる出力チャタリングを除去します。MAX4257は、レールツーレール出力および単一電源オペレーションを提供する、低ノイズ、低歪みのオペアンプを備えています。オペアンプの歪みは、入力電圧ノイズ密度や入力電流ノイズ密度と同様に極めて低くなっています。

