HVACは、パンデミック後にスマートビルを強化し、居住者の健康を保護

3年前に新型コロナウイルスが発生して以降、パンデミック対策は、当初の受け身の対応から、より体系的で先を見据えたアプローチへと徐々に変遷しています。政府、企業、および個人も、人々の健康を維持し、私たちが慣れ親しんだ生活を継続できるように、さまざまな新技術および革新的な方法を積極的に取り入れています。最も直接的かつ効果的な方法は、建物をスマート化することにより「個人の番人」にすることです。
通常、人々はスマートビルと聞くと、省エネおよび環境保護に加え、居住者や利用者の快適さと効率性を高める機能を思い浮かべます。しかし、意外にも見落とされがちなのは、最も基本的で必要な機能、つまり「健康的で安全なインテリジェントな空調システム(HVAC)」です。
HVACシステムの重要性
これまでの多くの事例および研究により、ウイルス(新型コロナウイルスを含みます)は、病棟やウイルス濃度の高い人口密集地など、一定の条件下ではエアロゾル感染する可能性があることが確認されています。
人騒がせな人と言われることを承知で、いくつかの例を挙げます。
- 2020年の初めの発生当初、日本から出港したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」は、管理不備と旧式の集中型空調装置の電源オフが間に合わず、700人もの大規模感染に見舞われました。 その後、他のクルーズ船でも感染事故が発生しました。 これらの感染発生を拡大させた原因は、クルーズ船の居住空間が狭く、乗客が密集していることにありましたが、スマートな空調システムがないことも大きな原因でした。
- SS発生当初、中国のボランティアが湖北省に赴き、パンデミック対策に協力しました。 武漢のホテル業界は、医療スタッフに無料で休憩場所を提供しましたが、その際「ホテルの集中型空調装置を使用しないように」ということを強調しました。
新型コロナウイルスが空調システムを介して感染するという決定的な科学的データはありませんが、ホテル、オフィス、ショッピングモール、学校、医療施設、および美容施設では、将来の感染拡大リスクを最小限に抑えるために、空調システムの設計と製造を最適化する予防策を講じるよう勧告されました。
HVACシステムの紹介
明らかに、空調システムは、スマートビルにおいて居住者や利用者の健康維持に重要な役割を果たす重要な機能の1つです。 では、HVACシステムの構成を具体的に見ていきましょう。
I. HVACシステムの基本的な構成要素
HVACシステムの主なサブシステムは、暖房、換気、および空調です。
暖房は、主に温水暖房と蒸気暖房で構成されています。 ビルでは、温水暖房の方が一般的です。つまり、温水を使って二次熱交換器で熱交換し、室内温度を一定に保ちます。
換気は、室内空間に新鮮な空気を取り入れ、汚れた空気を取り除くプロセスです。 換気の主な目的は、室内の空気の質を確保することです。 適切な換気により、室内空間の温度を下げることもできます。 換気には、自然換気と機械(強制)換気があります。
空調はさまざまな部品で構成されており、その目的は「空気を調和」させることで、設定された条件を達成することにあります。 その基本的な機能は、ビル内に送り込まれた空気の余分な熱と湿度を除去して空気を調和することにより、温度と湿度を人体に適した範囲に保つことです。
II. HVACシステムの分類および説明
1. 目的による分類
快適性を目的とする空調設備では、快適な環境に相応しい温度に保つ機能が求められ、一般的に温度と湿度の設定精度の要求は、さほど厳しくありません。 通常は、住宅、オフィス、劇場、ショッピングモール、体育館、自動車、船舶、航空機などで使用されます。
他方、設備用・工場用エアコンでは、温度と湿度の調節精度に加え、より高い空気の清浄度が求められます。 これは、電子機器の生産工場、精密機器の生産工場、コンピュータ室、および生物実験室で使用されます。
2. 機器の種類および設置場所による分類
集中型(セントラル)空調システムの場合、空気処理装置が中央の空調室に設置され、そこから処理済みの空気が換気ダクトを通して各部屋へ送られます。 これは、ショッピングモール、スーパーマーケット、レストラン、船舶、工場のように、面積が広く、部屋が密集し、各部屋の熱負荷と湿度負荷が比較的近い建物に適しています。 長所は、機器の保守と管理が容易で、騒音と振動の管理も比較的容易であることです。 短所は、中央の空調システムの送配電系統においてファンやポンプのエネルギー消費量が比較的多いことです。
半集中型(セミセントラル)空調システムの場合、中央の空調装置に加え、各末端に空気処理装置が設置されます。 このシステムは、セントラル空調よりも複雑ですが、温度および湿度設定の調節精度が向上します。 これは、ホテルやオフィスビルなど、各部屋で個別に調節が必要な公共のビルに適しています。 通常、セミセントラル空調の送配電系統によるエネルギー消費量は、セントラル空調と比べると少ないものです。
ローカル空調システムの場合は、空気を処理するために各部屋に空調装置が設置されます。 空調装置が、部屋の中または近くに設置され、局所的に空調を行います。 これは、オフィス、パソコンルーム、家庭など、面積が狭く、部屋が散在し、熱負荷と湿度負荷の差が大きい場所に適しています。 1台の空調装置で構成される場合もあれば、温水や冷水を集中的に供給するファンコイルユニット(FCU)で構成される場合もあります。 温度は部屋ごとに調節できます。
3. 空調負荷媒体による分類
全空気方式では、温風と冷風のみをダクトを通して空調エリアに送り込みます。 一般的な全空気方式では、新鮮な空気と返り空気は冷却コイルを通して混合および処理され、暖房または冷房のために室内に送られます。
全水方式では、冷水と温水の集中供給によって空調負荷を担います。 中央装置で作られた冷水が、室内の空調のために空気処理装置のコイル(ターミナルユニットまたはファンコイルとも呼ばれます)に送られます。
空気・水併用方式では、中央で処理された空気が空調負荷を担います。 他の負荷は、水媒体を介して空調室に入り、空気が再処理されます。
最後に、冷媒空調方式とも呼ばれる直接蒸発ユニット方式では、空調負荷を冷媒が直接担い、冷凍機の蒸発器(または凝縮器)が空調室から直接熱を吸収(または放出)して空調室の空気と温度を制御します。
HVACシステムの開発動向
HVAC業界は、環境の変化と技術の進歩に伴い、よりエネルギー効率が高く環境に優しい「コネクティビティ」を強化することで、建物のスマート化を進めています。
- つながるほどスマートに
現在、ほとんどすべての新築ビルには、スマートメーター、サーモスタット、およびセンサーが幅広く設置されています。 これらのスマートコネクテッドデバイスを利用することにより、エネルギーコストを削減すると同時に、ビルの温度、湿度、および空気の品質を簡単に制御できます。 技術の進歩に伴い、HVACは「話せる」センサーを手に入れることになるでしょう。 温度、湿度、明るさ、太陽の位置などの屋外の状況を把握し、それに基づいて自動的に設定を調整することで、事前に設定した屋内の条件を達成し維持できるようになるでしょう。
さらに進むと、HVACソフトウェアは、データを収集してレポートにまとめ、利用傾向、システムの状態、および過去の利用度などを報告できるようになるでしょう。 これらレポートは、予防保全のための処方箋として、また故障の原因を正確に特定して迅速に修理するために使用できます。 最新のソフトウェアを搭載した一部のHVACシステムは、既に自己診断機能を備えており、HVAC技術者は、問題を迅速に解決し、ダウンタイムを最小限に抑えることができています。
- より環境に配慮し、よりエネルギー効率が高く、より環境に優しい
エネルギー効率の高いHVACシステムおよび機器は、人々の環境意識が高まり、太陽光パネルや風力タービンを使用してエネルギーコストの削減に取り組むようになるにつれ、普及しつつあります。 同時に、地熱を利用した冷暖房も増えており、一部のビルでは、天然ガスと太陽光発電を組み合わせてシームレスに切り替えることで電気料金をコントロールしています。エネルギー効率の高いHVACシステムおよび機器の使用により、電力需要が効果的に削減され、HVACシステムおよびビル全体のスマート化が進むだけでなく、環境配慮型に変遷しています。

