工業オートメーションの概要を知りたいのであれば、ドローンを送りましょう!

Harris Williamsがまとめた「工業オートメーション業界の最新情報(2021年)」のデータによると、2020年の世界のオートメーション市場の価値は、約1,750億米国ドルですが、2025年までに約2,650米国ドルに達すると予測されています。明らかに、工業オートメーションは、世界規模で加速度的に成長しています。
基本的に、工業オートメーション技術は、制御理論、計装理論、および情報技術を使用して工業生産プロセスの検知、制御、最適化、計画、管理、および意思決定を実現することを意味します。これは、生産拡大、品質向上、消費削減、安全性確保を目的とする包括的な技術です。
今回の新型コロナウイルスの世界的蔓延は、工業生産における労働集約的な業界に多大な影響を与えており、オートメーションとスマート・ソリューションの緊急のニーズが市場全体で広がっています。
図1 世界のオートメーション市場価値の統計および推計(画像:Harris Williams)
サーボ制御は、工業オートメーションの土台
工場の場合、工業オートメーションによる精密製造と柔軟製造を実現した生産ラインの導入は、革新的スマート企業にほぼ不可欠です。サーボシステムは、工業オートメーションによる精密製造と柔軟製造を実現する中核技術であり、産業ロボットの原動力です。
スマート製造へ移行する企業の第一要件が、生産性と生産効率の拡大であることは共通認識となっています。しかし、そのためには高度な機器の支援が必要です。ロボット、CNC工作機械、および電子製造を利用する高性能機器の製造業界の場合、位置決め、速度、トルクなどの動作要素を精密に制御する必要があります。高精度サーボシステムが、精密制御を実現する鍵です。
ほとんどの工業オートメーションシステムと同様、サーボシステムは、コントローラ、サーボドライバ、およびサーボモーターの3つで構成されています。他の工業オートメーションシステムが、問題の発生後に故障およびエラーに対する再較正と補正に苦労しているのと異なり、サーボシステムは持続的に最適化できます。また、ミクロン単位の細かい精度で各リンクを制御できます。
サーボシステムは、精密製造における精密制御を実現して生産を加速化できると同時に生産品質を向上させることができ、そのすべてが作業効率と生産価値の拡大に寄与します。他方、制御の精度および効率性を向上させることにより、機械部品の加工精度と伝動メカニズムのオペレーション精度への依存を抑えることで、精密機械の製造コストを削減できます。
ドローンが工業オートメーションに「飛び込み」
工業オートメーション用途では、ドローンが「無人」および「自動化」リンクの実現において重要な役割を果たしており、保守、計測、調査、および生産監視も実行しています。その利用価値は、捕捉する画像の解像度の持続的な向上とともに高まっています。ドローンで集めたデータが、分析ソフトウェアを使用して、さらに詳細な分析、管理、保守、および予測能力を提供しているのです。
ドローンには、さまざまな細かい飛行動作のための精巧なサーボ制御システムが必要です。このシステムは、ドローンの頭脳とみなすことができます。たとえば、競技用ドローンに必要な制御レベルを達成するためには、4個の高性能マイクロコントローラ(MCU)を使用して、4プロペラドローンの4台のブラシレス直流電子(BLDC)速度制御(ESC)モーターを制御する必要があります。Cortex-M4 MCUは、飛行制御に加え、センサデータの読み取り、飛行姿勢の制御、円滑な通信などの複雑なタスクに使用されます。
NXP Semiconductorsが発売したi.MXRT1052プロセッサは、外部の4チャネルパワーモジュールを介して、無誘導フィールド指向制御(FOC)アルゴリズムを持つ4個のブラシレスモーターを駆動できます。1個のMCUだけで複雑なタスクを実行するのです。これにより、システムサイズの縮小とともに全体的な製造コストを削減し、ドローン開発に魅力的な新しい道筋を切り開くことができます。
このプロセッサは、MPUと同等の処理能力を持っているため、LCD、カメラ、USB、UART、CAN、イーサネット、PWMなどの周辺機器のインターフェースをサポートします。これにより、ビデオデータに加え、加速度計、姿勢制御装置、磁気コンパス、および気圧センサで捉えたデータを含め、センサ信号を簡単に処理できるのです。プロセッサは、このデータを計算および処理してさまざまなチャネルで通信を調整します。
また、i.MXRT1052は、統合型DC-DCコンバータを備えています。さらに、そのUARTインターフェースを使用して高速制御のためのアナログ信号を送信することにより、位置、速度、およびACモーターのモーター電機子電流を高精度で制御できます。
STMicroelectronicsのドローンソリューションであるSTM32G4には、3個のハードウェア・アクセラレータが追加され、この中にはコード加速化を備えたART(Adaptive Real-Time)アクセラレータ、事前設定の確定保証 を備えたキープログラム加速CCM-SRAM(Core Coupled Memory)、および三角関数とデジタルフィルタを備えた数学アクセラレータが含まれています。この構成により、センサはプロセッサの主要な周波数リソースが不十分な場合に、データを高速で戻すことができます。
STM32G4を搭載したB-G431B-ESC1ディスカバリキット
また、STMicroelectronicsは、センサレスフィールド指向制御(FOC)アルゴリズムまたは6ステップの整流制御を処理できる全機能モーター速度電子制御ディスカバリキットを提供しています。そのオンボード機能では、モーターセンサおよび3つのシャント抵抗による電流検出をサポートしています。また、X-CUBE-MCSDK v5.4.1モーター制御SDKと併用して、6S LiPoバッテリ駆動ドローン用にモーター速度の電子制御を実現できます。
今後も、AI、ビッグデータ、エッジコンピューティングなどの次世代の技術は、工業オートメーションを新しいレベルへと高め続けるでしょう。この大きな可能性を実現するために、奥深い業界知識と経験、そしてドローンが必要なのです!

