5Gの将来を決めるのはソフトウェア定義無線

過去の他の多くのアプリケーションと同様、ソフトウェア定義無線(SDR)は、5Gの開発でも大きな役割を果たしています。 事実、SDRがなければ、5Gの可能性は全く実現できない可能性があります。
SDRは、大幅な小型化、アナログ・デジタル統合、低消費電力、1つのプラットフォームを用いた複数の製品ラインへの対応、およびハードウェアまたはサービス導入後はソフトウェアさえ交換不要な再構成を含め、受信機の設計および構造に対して手頃な価格で効率的なアプローチを実現するための条件をすべて備えています。
では、SDRは、それをどのように実現するのでしょうか? 細かく見ていきましょう。
技術発展によりSDRが実現されるまで、スーパーヘテロダイン・アーキテクチャおよびそのバリエーションが受信機設計の頼みの綱でした。これは、1918年に周波数変調(FM)の父であるエドウィン・アームストロングにより考案されてから変化していませんでした。公平に言うと、フランス人技術者であるリュシアン・レヴィの貢献もあると思われますが、議論は続いています。

図1: 従来のスーパーヘテロダイン受信機
分かりやすく言うと、「スーパーヘテロダイン」は、周波数混合を使用して受信信号を元の信号と同じ特性を持つ、より低い固定した中間周波数(IF)へ変換します(図1)。すべての部品がアナログであることに注意してください。
他方、SDRは、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアで構成されており、機能は、ソフトウェアまたはファームウェアを介して導入され、処理は、FPGA(フィールドプログラマブル ゲートアレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、汎用プロセッサ、または専用ASIC(特定用途向け集積回路)により実行されます。これら機能は、デジタル領域で実行されるため、新規または改良版のハードウェア使用することなく、既存の無線をローカルまたは無線により機能向上および能力向上できます。これは、従来の受信機のアーキテクチャでは不可能でしょう。もう1つの利点は、ハードウェアは、ソフトウェアを介して新規または修正プロトコルなどネットワークの変更および改善に対応できるため、耐用年数が非常に長くなることです。
SDRは、受信機のRFFE(無線周波数フロントエンド)で使用される多くの大型アナログ部品が不要であるため、超小型化できます。たとえば、ダイレクトRFサンプリングと呼ばれるテクニックが使用されており、入力信号は、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を介してアンテナの非常に近くでアナログからデジタルへ変換されます。これにより混合器と局部発振器が不要となり、必要なのは、LNA(低ノイズアンプ)、バンドパスフィルター、およびADC(下記の図を参照)だけです。とは言っても、元の周波数が高すぎてADCで処理できない場合、ダウンコンバートが必要となります。それでも、スーパーヘテロダインと比較してはるかに小型化できる可能性があります。
すべてのデジタル部品は、1つまたは2つのデバイスに組み込めるため、郵便切手の大きさの完全な受信機を低コストで製作できます(図2)。もちろん、細かく設計すればするほど、サイズは大きくなりコスト高になります。 事実、Amazonは、USBでノートPCへ接続できる1インチ平方足らずの非常に基本的な受信機を26ドルで販売しています。
送受信機を製作する場合、信号の方向が逆になり、デジタル信号は、デジタル・アナログ コンバータ(DAC)へ送信され増幅およびフィルタ回路に通されて望ましい周波数に変換された後に送信のためにアンテナへ送られます。受信/送信モジュールのサイズは、多少大きくなりますが、それでも圧倒的に小型化できます。5G無線は、26ドルのSDRと比較してはるかに複雑ですが、基本的なコンセプトは同じです。

図2:ソフトウェア定義無線受信機は、基本的な形式としてスーパーヘテロダインよりはるかに構造が簡単
5Gにおける重要な課題
この説明は、基本的な説明であり、SDRが意図した性能を達成するために克服すべき重要な課題を考慮していません。5Gでは、これがかなり難しくなります。というのは、約600 MHz~7 GHzの帯域幅で網羅すべき周波数の数が増加しているためです。また、非常に複雑な高次変調テクニックが使用されています。送受信機は、小型化したと言っても、スマートフォン、小型セル、またはリピーターに収まるほど小さくなければならず、消費電力をできる限り低く抑えなければなりません。
RFのデジタル化は、5G ネットワークの「仮想化」にピッタリと当てはまり、アナログ機能は、SDNおよびNFV(ネットワーク機能の仮想化)により必要最小限に抑えられます。これは、SDRと同じ理由で起きています。5Gは、技術的に動く標的であり、今後数年で多くの点で変化するでしょう。このような変更を行うために設計者がハードウェアにのみ依存するとしたら、5Gは、はるかにコスト高または技術的に導入不可能になるでしょう。
SDRアーキテクチャのミリ波周波数への拡張
5G 無線の設計者が直面するもう1つの課題は、5G規格に定められているミリ波周波数で使用するためのSDRアーキテクチャの拡張です。この膨大な帯域幅は、超高速のデータ転送速度を実現するために必要ですが、より低い周波数では簡単に達成できません。これら周波数でSDRまたは送受信機を設計することは簡単ではありません。というのは、特に、最近まで十分に活用されていなかった半導体技術を使用する必要があるからです。
しかし、ミリ波は、非常に小さいためフェーズドアレイ型アンテナに組み込むことができ、非常に小さな面積で数百個の素子で構成される完全な通信パッケージを実現できます。これは、少なくとも1つのベンダーおよび5Gネットワーク機器メーカーの研究施設で既に実現されています。
今後やるべきことは、伝送距離が非常に短いミリ波信号を用いて5Gで全国を網羅するために必要となる小型セルが膨大な数に上り、それに見合うコストで大量生産可能にすることです。10年前であれば、これが実現できるとは夢物語と思われたかもしれず、また、より難解な5Gの一部機能の実現は、2030年頃の6Gまで待たなければならないかもしれません。かつて夢物語と思われた他の多くの技術が実現したように、これは間違いなく実現するでしょう。
今後数年以内に、本記事で紹介したすべて事例を含むほほすべての種類のシステムにおいて、SDRは、受信機アーキテクチャの選択肢となり、ADCは、それを成功させる最も重要な原動力の1つとなるでしょう。
また、ADCのサンプリングレートおよび瞬時帯域幅は増加し続けており、より高い周波数で直接サンプリングできるようになるでしょう。この種のデバイスで不要輻射を発生させないために、高ダイナミックレンジ受信機(HDRR)技術などのテクニックがミリ波領域で必ず必要になるでしょう。

