EV(電気自動車)の持続可能性ロードマップ
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EV(電気自動車)の持続可能性ロードマップ

先進的EV

新エネルギー自動車産業の発展とともに、電気自動車に乗り換える家庭が増えています。炭素排出量が少なく、ランニングコストが低いことを考えると、簡単な選択です。

持続可能性は、エネルギー消費と炭素排出量の削減に注力している自動車メーカーにとって最優先事項です。こうした目標の実現は、貴重な資源の節約だけでなく、企業のコストや環境処理コストの削減にもつながります。潜在的な経済的、社会的、環境的メリットは計り知れません。

EVが最終的にどれだけ環境に貢献するかは誰にもわかりませんが、資金調達の強化や徹底した研究により、その開発は進み続けています。

過剰な排出がもたらした環境危機

自動車は環境汚染の原因であり続けています。台数や使用頻度が増えるにつれ、環境への悪影響も増大しています。 車の排ガスには何百種類もの化合物が含まれ、その中には汚染物質の炭化水素、窒素酸化物、一酸化炭素、二酸化硫黄、鉛含有化合物、ベンゾピレン、固体粒子などがあります。複数の研究により、1台の自動車が1年間に排出する有害な排ガスの重量は、自動車本体の重量の3倍になることが示されています。

下の図表からわかるように、運輸業は地球の温室効果ガス排出の主要な原因となっています。 特に、道路輸送は世界の二酸化炭素 (CO2)排出量のほぼ半分を占めています。

 

出典:国際エネルギー機関(IEA)

 

ガソリン車やディーゼル車が出す排ガスには、以下のような環境に悪い化学物質が多く含まれています。

  • 二酸化炭素(CO2)
  • 窒素酸化物(NOx)
  • 粒子状物質(PM10)
  • オゾン(O3)

電池技術でグリーンな低炭素輸送を推進

1970年に欧州で初めて乗用車の排ガス規制が実施されて以来、世界中の国や機関は排ガス規制を進めてきました。1992年には、ユーロ1規則が導入されました。これは、一酸化炭素の排出を抑えるためにガソリン車に触媒コンバーターの装着を義務付けたものでした。現在もユーロ6規則に準拠し、1992年比で約96%の汚染物質排出量の削減を実現しています。

技術の向上とともに、EVが省エネや環境保護にもたらすプラスの影響も大きくなっています。

ガソリン車やディーゼル車からEVに乗り換えることで、温室効果ガス(GHG)排出量を約37%、事業活動における排出量を約75%削減できるという調査結果も出ています。下の図表からわかるように、内燃機関自動車と比較すると、EVは車体とバッテリー生産を除くすべての分野において炭素排出量が少なくなっています。

 

出典:Capgemini SE

 

電池技術の飛躍的な進歩に伴い、多くの革新的な成果やその活用が期待されています。ゼロエミッションの電気自動車は、すでに多くのドライバーの手の届くところにあります。そして、EVの残された欠点は今後間違いなく克服されるでしょう。わずか数分の充電で500km以上の走行を可能にする電池パックが登場するなら、もう阻むものはなくなります。

エキサイティングな研究開発

電池技術の研究開発の最前線にある、エキサイティングなコンセプトをいくつか紹介しましょう。

車体そのものがバッテリーに

チャルマース工科大学(スウェーデン)は、新しい自動車用構造部材を電池部品として利用する研究を進めています。つまり、車そのものがバッテリーなのです。これにより、車両全体の重量が大幅に減り、軽量化とエネルギーの効率化が実現します。この新しい電池は、負極に炭素繊維、正極にリン酸鉄リチウムを使用しています。両素材とも剛性と耐久性に優れ、EVの車体構築に最適です。

カーボンナノチューブ電極

一方、米国に拠点を置くNAWA Technologies社は、独自の電極材料を開発し、工業化を進めています。ナノとグリーンの技術の粋を集めた超高速の炭素電池です。

この画期的な技術は、垂直に並んだカーボンナノチューブを用いて、現在の電池パックより最大10倍強力なバッテリーを実現します。また、エネルギー貯蔵の効率を3倍に高め、バッテリーの寿命を5倍に延ばすことができます。この炭素電池は量産目前といわれており、わずか5分で充電容量の80%に到達可能だとされています。

コバルトフリー電池

米国のテキサス大学は、正極(カソード)にコバルトを使わないリチウムイオン電池の実現に取り組んでいます。 コバルトに代わり、正極は最大 89% のニッケルとアルミニウム、マンガンで構成されます。 コバルトは希少で高価な金属であり、その採掘や製造は環境に有害であるためです。 
中国のSVOLT Energy Technology社も、EV市場向けにコバルトフリー電池を製造しています。 同社の目標は、より高いエネルギー密度の電池を製造し、1回の充電で最大800kmの走行を実現することです。

シリコンアノード電池

リチウムイオン電池の不安定性を解決するため、東フィンランド大学の研究者は、メソポーラスシリコン微粒子とカーボンナノチューブを用いたハイブリッド負極(アノード)の製造方法を開発しました。負極をグラファイトからシリコンに置き換えることで、電池容量は10倍に向上します。さらに、このシリコンは環境に優しい大麦のもみ殻灰を原料としているのです。

海水や砂からバッテリー材料を抽出

IBM基礎研究所は、海水から抽出される新たな電池化学成分を発見しました。 成分に重金属は含まれず、リチウムイオン電池をしのぐ電池が生み出されます。この材料はバッテリーの高速充電を可能にするだけでなく、低コスト化、蓄電量アップを実現します。

また、カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者は、砂から抽出した純粋なシリコンを使用する電池技術を開発中です。これにより、現在使用されているグラファイトベースのリチウムイオン電池の3倍の寿命を持つ電池が生まれています。 また、バッテリーの寿命も延びます。

全固体電池

全固体電池はその名の通り、強固に圧縮された硬い材料でできており、これはリチウム電池によく使われる、やや粘性のある湿った材料とは異なります。最近では、トヨタやSolid Power社などの科学者が、硫化物系超イオン伝導体を使用して性能を向上させた全固体電池を開発しています。発表によると、この電池はスーパーキャパシタレベルで動作し、わずか7分でフル充電が可能です。また、全固体電池は熱安定性に優れ、現在の主流であるリチウム電池よりも安全に使用できます。

空気亜鉛電池

シドニー大学の研究者は、安価な空気亜鉛電池を作る方法を発見しました。リチウムイオン電池よりも高性能で安全な電池です。これまで、空気亜鉛電池の開発における課題はコストでした。科学者たちはこの課題を克服し、より安価で安全な電池を誰でも利用できるようにしようと研究に取り組んでいます。

他にも、Rydenデュアルカーボン技術により電池寿命が延び、充電が従来比で20倍に高速化されるなど、刺激的な開発が行われています。しかも、この電池は現在リチウム電池を製造している工場で生産可能です。
また、グラフェン電池とアルミニウム空気電池の技術はより安価で軽量になり、充電速度も上がります。

 

バッテリー、そしてEVの未来は明るく思われます。エキサイティングな新素材が、環境への悪影響を軽減しつつ電池の効率を高め、寿命を延ばすでしょう。わずか数分の充電で1000km走行できる夢のEVが、現実のものとなります。 あとは時間の問題なのです。
 

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