TWSヘッドフォンのバッテリー寿命を延ばす「充電器」とは?
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ワイヤレスヘッドフォンをして海辺で一休みする、運動中の女性

IDCが発表した最新のデータによると、世界のウェアラブル端末の出荷台数は、2020年に前年比14.5%増の3億9600万台に到達する見込みです。ウェアラブル市場における全出荷台数の約60%は、ワイヤレスヘッドフォンが占めています。本当に見事です。


図1:世界のウェアラブル市場の出荷台数の分析(出典:IDC)

 

ワイヤレスヘッドフォンの需要を促す主な要因の1つは、TWS(完全ワイヤレスステレオ)ヘッドフォンの台頭です。アップルは2016年にAirPodsを発売し、ごく短期間に市場で大きな成功を収めました。白い「オタマジャクシ」を耳に付けた通勤者を日々目にすることに慣れたことは、アップルの市場浸透率を証明しています。
AirPodsの絶大な人気は他のメーカーの追随を促し、最終的にTWS市場の全体的な繁栄に貢献しています。IDCの早期市場分析によると、TWSヘッドフォンは、この数年間100%の成長率を維持しています。出荷台数は2019年に1億2000万台に達し、2020年末までには2億台を超えることが期待されています。


図2:世界のTWSヘッドフォン市場傾向および各メーカーの市場占有率 (出典:IDC)

 

しかし、市場分析は、横取りして大儲けを狙う「狼」の存在にも関わらず、アップルのシェアが40%を超えており、TWS市場を圧倒していることを示しています。これは、ある程度は同社のマーケティング戦略で説明できますが、アップルのAirPodsに匹敵する市販製品が非常に少ないというのが事実です。Bluetoothヘッドフォン分野の一部のトップ企業を含む多くのメーカーは、第1世代のTWS製品の設計および生産に行き詰っており、TWSが今でも応用の敷居の高い比較的高度な技術であることが確認された格好です。AirPodsなど新境地を開く業界の水準が存在する中、新規参入企業は非常に高いハードルに直面しています。

その間、エンドユーザーの期待はかつてなく高まっています。音質の「耳障り」の良さに限界はなく、音声の遅延もゲームを妨げないように、できる限り短くなければなりません。さらに、ノイズ低減はパッシブかアクティブかに関わらず、高い期待に応えなければなりません。また、最も重要な指標であるTWSのバッテリー寿命も忘れてはならず、これは無限に続くのが理想的です。

正直に言って、Bluetoothマスタチップ、 オーディオ・デコーダ、スピーカー、マイク、メモリ、センサ、その他の部品をわずか数グラムのヘッドフォンに組み込むことは既に難しくなっています。容量の多い大型バッテリーの場合はさらに組み込みが難しく、バッテリー寿命の点でTWSヘッドフォンは従来のBluetoothヘッドフォンよりも一般的に劣ります。しかし、AirPodsの発表により、アップルは私たちに納得できるソリューションを提供しています。それは、ヘッドフォンを使用していないときに充電できるようにヘッドフォンを保管する充電ケースを使用することです。これにより、ケースから取り出した時には常に完全に充電されており、ヘッドフォンの累積バッテリー寿命が大幅に伸びます。第1世代のTWSの合計バッテリー寿命は、一般的に10~20時間ですが、充電ケースを使用することにより、最新のTWSは最大35~30時間持続できます。

小型でスペースが非常に限られたイヤフォンと比較して、TWS充電器の設計は、はるかに簡単なように思われます。しかし、課題は考えられているより大きなものです。2つの大きな課題から始めましょう。

  • 小型:携帯端末の1つであるTWS充電器の大きさは非常に限られています。現在の流れから見ると、無線充電などの新しい機能は充電器に追加され続け、スペースの活用は同様に重要になるでしょう。
  • 高効率:効率が低いと、充電プロセス中にヘッドフォンが加熱することがあります。これは、充電速度を低下させ、エネルギー損失を増加させ、合計バッテリー寿命に負の影響を与えます。
このような問題の解決には、特別に最適化された製品の支援が必要です。朗報は、このような課題に取り組むために特別に設計された製品およびソリューションが存在し、既に市販されていることです。

たとえば、Maxim Integratedは、イヤフォンの充電回路を簡素化してシステムのスペースを圧縮できる斬新なソリューションを最近発表しました。

従来のTWS充電プロセスでは、3個以上のピンが必要であり、そのうち2個は充電に使用され、それ以外は充電ケースとヘッドフォンとの通信 (またはデータ)チャネルの確立に使用され、ヘッドフォン・バッテリーの充電状況を追跡して充電プロセスを制御したり、端末のファームウェアのアップグレードや工場でのデバッグが行われたりします。一部のソリューションでは、専用(ポゴ)ピンを使用してヘッドフォンが充電ケースに入っているかを検知します。しかし、ピンが増えると回路の配線が複雑になり、信頼性の点でリスクが増えます。


図3:典型的な充電ケースはイヤフォンの充電回路を備えており、少なくとも3個のピンが必要(画像提供:Maxim)

 

この課題に対処するために、MAX20340 DC電力線搬送通信管理ICの導入により「電力線搬送通信」ソリューションを提案しています。このソリューションは、データ伝送と電力伝送を1つのチャネルに統合し、データ信号を電力供給に重ね合わせるため、必要なピンが2本だけです。このピンは電力伝送(最大充電電流1.2A)と双方向通信(最大速度166.7kbp)を同時に実現できるため、充電システム全体が簡素化されます。


図4:MAX20340は、ヘッドフォンと充電ケースとのデータ伝送および電力伝送を実現するためにわずか2本のピンが必要 (画像提供:Maxim)

 

Maxim Integratedは、充電ケースのヘッドフォン充電効率を向上させるために、さらに別の独特のソリューションを提案しています。

典型的な充電ソリューションでは、充電ボックスの中のリチウムイオンバッテリーが5Vの電圧でTWSヘッドフォンを充電します。ヘッドフォンのバッテリー電圧が充電中に徐々に増加しても、充電ボックスの出力電圧(つまり、ヘッドフォンのリニア充電器の入力電圧)は5Vで一定します。この高電圧は、より多くの電力を散逸させ、全体的な効率を低下させます。

Maxim Integratedは、新発売のMAX20343ブースト・バック・コンバータにより、ダイナミック電圧レギュレーション(DVS)技術を使用してこの問題を解決しています。充電中、充電ケースの出力電圧出力(つまり、ヘッドフォンのリニア充電器の入力電圧)は、ブースト・コンバータにより検知されたバッテリーの電圧差とともに変化し、エネルギーの損失を減らして効率性を向上させます。


図5:MAX20343ブースト・バック・コンバータは、DVS技術を使用して充電効率を向上 (画像提供:Maxim)

 

上記のMAX20340およびMAX20343の組み合わせにより、小型で高効率のTWS充電ケースが構成されています。MAX20340はヘッドフォンのバッテリー電圧を断続的に問い合わせ、その情報を充電ボックス内のコントローラへ提供し、その後、マイクロコントローラはMAX20343の出力電圧を調整して、ヘッドフォンのバッテリー電圧およびリニア充電器が必要とするマージンに一致させます。これにより、充電ボックス内のバッテリーのエネルギーの浪費を最小限に抑え、ヘッドフォンの充電中の過熱を回避し、充電速度を高めます


図6:TWS充電ケースソリューションはMAX20340とMAX20343を組み合わせて実現 (画像提供:Maxim)

 

IoT時代における他のバッテリー式の無線製品と同様、TWSも深刻な電力管理の課題に直面しています。電気自動車が目的地までの電力を補充するために充電所を必要とするように、TWS充電ケースはワイヤレスヘッドフォンのバッテリー寿命の延長に不可欠です。幸運にも、革新的な技術によりTWSのバッテリー寿命は継続的に伸びています。これがTWS市場全体の継続的な開発の原動力となり、次世代のワイヤレスヘッドフォンの新しい製品コンセプトを生み出すでしょう

 

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