スマート製造に本当に必要な「目」とは?
スマート製造に本当に必要な「目」とは?

スマート製造に本当に必要な「目」とは?

目の写真と産業用ロボットの写真

インダストリー4.0への移行に伴い、かつて私たちが慣れ親しんだ工場や製造ラインは新たなテクノロジーの実験場と化しています。製造効率の向上に向けて製造の情報化およびインテリジェント化を促進するあらゆるソリューションやテクノロジーに、大きな変化をもたらす可能性が秘められています。マシンビジョンもその1つです。

産業用途におけるマシンビジョンは「産業用ビジョン」とも呼ばれ、一般的には特定の作業を行うために製造プロセスにおいて人間の目の代わりにマシンビジョンテクノロジーを用いることだと理解されています。これは自動化された業務をサポートするために機械に視力を持たせるようなものです。産業用ビジョンがスマート製造の「目」と言われることがあるのはそのためです。
機械によって代替されるその他の手作業もそうですが、産業用ビジョンが大いに注目を集めているのにも多くの理由があります。1つ目に、マシンビジョンは人間の視覚よりも精度が高く、裸眼では不可能な多くの作業をこなすことができます。2つ目に、機械は疲れることがなく、厳しい環境でも作業できるため、信頼性に優れています。さらに、機械は可視光線(赤外線等)以外も視認でき、人間よりも「視覚」の範囲が広いのです。効率性という意味で機械に明らかに分があるのは言うまでもありません。

このような技術的な理由以外にも、マシンビジョンの活用においては、経済性も重要な要素です。世界中で高齢化が進み、労働力の供給が縮小する中、工業生産の人件費は上昇しています。もはや人口ボーナスに頼ることはできないことから、現在では多くの経済で人間の労働力を機械に置き換えることが必要だと考えられています。

その一例として、電子機器セクターでは産業用ビジョンの適用率が最も高くなっています。中国では例えば、スマートフォンのカバーガラス、タッチスクリーン、ディスプレイの表面を検査するのに30万人の人手が必要とされ、ために膨大な人件費が発生していると推定されます。人間が行うこのような反復的な作業を産業用ビジョンソリューションに置き換えることは、効率的かつ効果的だと言えるでしょう。

市場の要求に後押しされ、近年、産業用ビジョン市場は急速に拡大しています。Shenzhen Gaogong Industry Research Institute(GGII)の推定によれば、中国の産業セクターがけん引するマシンビジョン市場は、2017年から2020年まで年間15%超のペースで拡大し、2020年までに120億 を超えるとみられます。おり、電子機器、自動車、医療、食品、その他多くのセクターが揃って、マシンビジョンの適用に向けた発射台となるでしょう。

製造プロセスで使用される産業用ビジョンの基本的な機能は、主に以下の要素で構成されています。

  • 物体認識:様々なターゲットまたはコンポーネントを特定しながら、マシンビジョンを通じて物体または画像を処理、分析、認識します。
  • 検査用途:色や画像等の視覚ターゲットを検査します。ほとんどが欠陥の検出、物体の位置や向きの確認に用いられます。
  • ビジュアルポジショニング:マシンビジョンシステムは、迅速かつ正確に検査待ちの部品を見つけ、その位置を特定できます。例えば、電子搭載装置では、マシンビジョンを使用することにより、チップの位置を取得し、リトリーバーを調整してチップを正確に取り出すことができます。
  • 物体測定:マシンビジョンをベースとした非接触測定技術により、接触と摩耗なく、正確かつ迅速にターゲットを評価します。

上記の機能を組み合わせ、さらに複雑な適用も可能です。

その他の適用分野におけるマシンビジョンと比較し、産業用ビジョンにはセクター特有の特徴がいくつかあります。産業用途であることから、完璧な性能と高い信頼性が求められます。ほとんどの産業用途は高度に垂直型であるため、具体的な適用ニーズにも大きなばらつきがあります。そのため、産業用ビジョンソリューションには、卓越した拡張性と柔軟性が必要になります。

それでは、どのような産業用ビジョンソリューションが「現実的な」ソリューションだと考えられるでしょうか?アヴネットの物体認識エンベデッドソリューションによる分析の例を以下に紹介します。


図1. アヴネットの物体認識エンベデッドソリューション

タイプにかかわらず、マシンビジョンシステムには、視覚情報収集システムと視覚処理システムという2つの中核機能モジュールが備わっています。アヴネットの物体認識エンベデッドソリューションにおける視覚収集機能には、オン・セミコンダクターのPYTHON-1300カラーイメージセンサーが用いられています。PYTHON-1300は、解像度HD 1280x1024の1/2インチSCGA CMOSイメージセンサーです。また、一般的な産業用イメージセンシング用途のニーズを満たすため、PYTHON-1300はグローバルシャッターを備え、高速・高感度、構成および解像度の柔軟性を特徴としています。


図2. PYTHON-1300をベースとしたカラーイメージセンサーモジュール

ソリューションにおける視覚処理システムは、イメージセンサーモジュールと結び付いています。この機能には、MicroZed SOMとそれに付属するビデオキャプチャカードで構成されるアヴネットのMicroZedエンベデッドビジョン開発キットが用いられています。MicroZed SOMが中核的な視覚処理・計算機能を提供し、ビデオキャプチャカードがHDMI入力/出力、カメラ画像モジュールコネクタ、Power over Ethernet(PoE)インターフェース等、映像処理に必要とされるその他の周辺回路・拡張機能を統合しています。


図3. アヴネットのMicroZedエンベデッドビジョン開発キット

このソリューションの核心となるのは、コアボードであるMicroZed SOMです。MicroZed SOMは、ザイリンクスの完全にプログラマブルなZynq-7000をベースとしたシステムレベルのモジュールです。つまり、他のマシンビジョンソリューションとは異なり、アヴネットの物体認識エンベデッドソリューションには、FPGA+Armのハイブリッド処理プラットフォームが用いられているということです。

ハイブリッド処理プラットフォームであるZynqには、システムオンチップ(SoC)を統合したプロセッシングシステム(PS)とプログラマブルロジック(PL)ユニットの両方が組み込まれています。エンベデッドビジョン開発者は、ソリューションを最適化するため、必要に応じて計算作業を2つのシステムに振り分けることができます。また、プラットフォームの柔軟性を活かして、追加のIOを配置し、複雑な視覚処理アルゴリズムをPLに割り当て、迅速化を図ることもできます。Zynqは、常に可能な限り最高のパフォーマンスを実現します。

また、Zynqの「ハードウェアプログラマビリティ」機能は、産業用ビジョンソリューションのさらなる柔軟性を可能にします。新しいアルゴリズムの試験か新しい産業用途への拡張かにかかわらず、このソリューションは、ロボティックポジショニングや画像検索、映像監視等の用途に簡単に対応できます。


図4. ZynqハイブリッドプロセッシングプラットフォームをベースとしたMicroZed SOM)

最新のスマート製造開発により、産業用ビジョンが普及することは間違いありません。産業分野における鋭い「目」を追い求める中で、技術進歩もこの機運を後押ししています。

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